GhosnがGone

 

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毎日、新たなニュースが報道されます。

それに伴って古いニュースは時の隙間にこぼれ落ちていつの間にか忘れ去られてゆくという定めにあるのですが、それでも記憶に残るニュースというものはあります。

昨年12月30日に報道された日産自動車元会長のカルロス・ゴーンが日本を密出国し、レバノンに逃亡した事件もその一つでしょう。

この事件については、アメリカの元グリーンベレーを代表としたチームが、ゴーンの逃亡を手助けしたとして、3人のアメリカ人に対して日本の司法当局から逮捕状が発行されています。

これまで新聞、雑誌、TV等で報道されているものを見ると、ゴーンは昨年12月29日に東京の保釈中居宅を出発し、新幹線で大阪へ行き、その夜、関西国際空港から大型の箱の中に潜み、荷物検査をすり抜け、プライベートジェットで出国し、トルコのイスタンブール経由、レバノンに入国したと言われています。

ゴーンの資産は数百億円とも言われ、今回の逃亡劇では、10億円以上の費用を要したとみられていますが、いずれも真偽の程はわかりません。しかし、ルノー、日産時代に資産を蓄積したとみられるゴーンにとって、(彼の言によると)不法・不当な日本の司法制度によって裁かれるよりも、少なからぬ費用を要しても自由な身にありたいと考えたのでしょう。この点について今回、議論するつもりはありません。

問題は、ゴーンが何故今回伝えられているような手段をもって逃亡計画を進めたのかということです。

私には、あくまでもマスコミ報道レベルの知識しかありませんが、先にも述べたようにアメリカ特殊部隊の経験を持つその道のプロが計画を立案し、実行したとされています。出入国に関する日本の空港の弱点を研究し尽くし、その結果、関西国際空港からプライベートジェット機で出国、成功したというのが現在の見方です。(現在発売中の文藝春秋3月号にこれに反論する記事が掲載されているようですが、私はまだ確認していません。)

私が注目するのは、今回の方法の失敗リスクが限りなくゼロに近いとはいえ、絶対であるとは言えないことです。出国の際、係員が箱を開け中身を確認したとすれば、一発でアウトです(ゴーンが潜んでいたとしての話です。)。

このようなリスクを残しながら、ゴーンが今回の手段を取ったとすれば、ゴーンはリスクを負いつつもそれに上回る成果を得たということでしょう。

すなわち、何かを得る為に物事を決断する時には、何がしかのリスクは避けられず、これを踏み切る勇気と、失敗した時の対策について考えておくことが必要だと思います。

冷静に考えれば、ゴーンは仮に失敗しても保釈を取り消され、拘置所に戻され、裁判を受けるだけの話です。今回の逃亡劇を実行しなくても結果としては同じだということができます。それであれば、賭けてみようかという気持ちになっても不思議はありません。

 

さて、次にゴーンが日産で行った功績と負の側面を考えてみましょう。

ゴーンの功績の第一番として挙げられることは、業績不振に陥った日産をV字型回復させたというものです。しかし、これについても私は疑問を持っています。

ゴーンは1999年3月に日産とルノー資本提携をした事により、1999年6月にルノーから派遣され、COO(最高執行責任者)に就任しました。ゴーンはコストカッターと呼ばれ、従業員のリストラ、工場の閉鎖、下請け取引の見直しなどを果敢に行い、経営立て直しを行いました。

日産はトヨタと並ぶ自動車業界の二強企業でしたが、トヨタとの差は徐々に拡がり、二番手企業としての位置付けが定着していました。

これの背景としては、日産における社内風土の問題があったと私は考えています。日産自動車鮎川義介が1910年に設立した「戸畑鋳物株式会社」が原点となっています。日産はトヨタと違い、オーナー企業ではなく、組織として経営を進めてきましたが、トップ間の争いが絶えず、1970年代には労働組合が経営に実質的に介入するなどして経営が悪化しました。1998年には2兆円の有利子負債を抱えていたと言われています。すなわちガバナンスに問題がありました。

ゴーンは就任後、日産の状況については正確に判断をしていたのでしょう。この点は、プロ経営者として立派だと思います。しかし、ゆるゆるの社内体制にあっては、これまでの日産と何らの関わり合いのない、ゴーンにとって濡れ雑巾を絞ることは簡単です。外国人だからできたという評価もありますが、やはり私としては当時の日産経営陣に問題があったと考えています。

この業績回復でゴーンの名声は高まりました。プロ経営者として業績連動の報酬も増額し、1999年にCOOに就任して以来、2018年3月期までの19年間の報酬総額は314億円にのぼるとされています。(東京新聞2019年3月29日朝刊)

ゴーンの胡散臭いところは、業績連動といいながら、業績が悪化した時(2009年3月期は赤字。無配)でも20億円を超える報酬を得ていたことです。一方、役員報酬の個別提示が求められた2010年3月期からは、10億円以下となっています。

2019年3月期の日本企業役員報酬の第一位は、ソフトバンクグループ副会長であるロナルド・フィッシャー氏の32億円でした。しかし、基本報酬は3億円で、残りは株式報酬を含むインセンティブだとされています。

ゴーンのその後の行状を見るに、やはりおかしいと思わざるを得ません。 

私はゴーンと同じ年ですので、余計に拘りがあるのかもしれませんが、プロ経営者として褒め称えてきた社会のあり方にも問題があると考えています。

ちなみに私の自家用車は、日産のノートです。2012年に購入して以来、8年経ちますが、乗り換えることができていません。ゴーンの所業を見ていてすごく残念な気がしています。

私が日産の車で一番好きだったのは、スカイラインでした。リヤボディの波型デザインは素敵でした。しかし、スカイラインは日産が合併したプリンス自動車の車です。

何とか日産には頑張って欲しいという気持ちはありますが、西川体制の後の新人事でもNO3が1ケ月も経たずに辞任したことを見ても不安に感じています。

新車投入も進んでいませんし、日産はバラバラですね。これがゴーンがもたらした最大の負の側面かもしれません。

shumaishunchan